『いけにえと雪のセツナ』感想

この間 Amazon で『いけにえと雪のセツナ』が 2,000 円だったので買ってみた。

曰く、「あの頃、みんなRPGに夢中だった。 当時遊んだ数多のRPGは、今もぼくたちの記憶に強く残っている。 パーティ編成、街での買い物、ダンジョン攻略、ギリギリで倒した強敵たち。 そして、エンディングで流した涙-。名作たちが与えてくれた感動は、今もなお色褪せない。とりもどそう、ぼくたちのRPG。」

…凄い売り文句だ。

バトルシステムはあのクロノ・トリガーをベースにしているらしい。 否が応にも期待値が高まる謳い文句だ。 高まりすぎて不安になる。

ネットのレビューを見てみると、やっぱりその期待値とのギャップに落胆している人が多いように見受けられた。 個人的には、単体のゲームとしてみればすごく楽しかったし、確かに荒削りな部分もあったけれど、 今後に大いに期待したくなる内容だったと思う。

Tokyo RPG Factory は、こういう意欲的な作品を今後も是非リリースしていって欲しい。 いちユーザーとしてそう強く願う。

個人的にプレイしていて色々と思うところがあったので、まとめておきたくなったのでまとめる。 ネタバレ全開。

(開発者の)制限プレイ

なんといっても本作、雪国しか出てこない。

本当にずーっと雪景色で、たまに古代遺跡の石畳を見るくらい。 プレイ時間の大部分は白い画面と向きあうことになる。

さらに、音楽はピアノオンリーである。 さすがにバトルシーンでは多少パーカッションやベースが入ったりもするが、ピアノが常にメインとなる。 ピアノフォルテの面目躍如といったところ。

こういう制限のなかで、いかに面白く見せられるか、というところに挑戦する姿勢が、 ファミコン時代の同時発色数4色、音は3音+ノイズだけだったころと通じるものを感じた。 やっぱり、日本人は限られたリソースの中で工夫してよいものを作るっていうのが、 得意とするところなんじゃないかなぁ、などと日本人観に思いを馳せてみたりもした。 舞台が雪国っていう中で、火属性無双にならないようにとか、 魔物のデザインとか、すごく苦労したんじゃないかと思う。

この制限が、結果としてよい方向にいったわけでは必ずしもないと思うけれども、 自分はこの挑戦する姿勢がすごく好きだった。

次は南国+ウクレレ縛りプレイとかに挑戦してもらいたい。

装備+法石システム

本作の装備品は、武器と法器の2種類しかない。 この点が残念だという人もいるらしい。 個人的には、兜盾鎧小手みたいに分かれている意味って、 雰囲気作り以上の意味はないように思えるので、特に気にならなかった。 単純な攻撃力や防御力だけではなく、 サポート効果も加味して装備を整えるという本質的な部分は、 法石システムによって実現されている。

今後のことを考えて昇華率アップ系の法器にするか、 それともいま、このバトルを乗り切るための法器にするか、 みたいなことに頭を悩ますのも楽しかった。

ただ、魔法は法石じゃないほうが、嬉しかったかな…。 連携技もすごい豊富でワクワクするのに、 セットする法石に制限があるので、 「とりあえず見るだけ見てみたい」みたいなのをやりたくても出来ない。 クロノ・トリガーだったら、キャラの組み合わせを変えるだけでよかったので、 本作では法石の組み合わせも変えないといけないのが、単に手間にしか思えなかった…。

バトル全般

〈グラーティア〉 + 〈久遠の剣閃〉とか、 そういうものすごく相性のよい魔法の組合せに気付いてしまってからは、一気にバトルが大味になってくる。

でもまあ、こういうのが運用出来るようになるのがそもそも終盤だし、 俺つえー出来るための組合せを探すのもそれはそれで楽しいので、あんまり気になっていない。 自分がヌルゲーマーだからかもしれない…。 〈ガグンラーズ〉があればMP補給無用で雑魚はサクサク片づくのとか、非常に助かったし。 〈叫ぶ〉+〈パーマネンス〉+ 〈ユグドラシル〉 + 〈アルティメット〉 でエンド無双になるのとか快感だったし。 クロノ・トリガーも終盤シャイニングだけ唱えてればだいたいなんとかなったし、そんなもん。 中盤は中盤で、エンドの〈回転斬り〉無双だった気もするが…。 まあそれはそれで「お、大体回転斬りでいけるやん!」って気づく過程が楽しかった。

全体的に、MP温存せずに雑魚にもガンガン使っていく感じで進められるのが快適だった。

キャラ毎の個性もハッキリしていてよかったけれど、 結局エンド+クオン+(セツナ or キール)最強だなーということで、 あんまり他のメンバーを使わなくなってしまった。 ディノタウルス系用にブロウビート要因のヨミを使うことはあったけど、それくらい。 まあ、クロノ・トリガーでも魔王やカエルは趣味枠だった気がする…。

法石に蝕まれた魔物

隠し中ボスみたいなのが攻略ルート上に普通に出現する。 気付かずにバトルを仕掛けると普通に全滅して普通にゲームオーバーになる。

この理不尽さも、懐しいかも…。

まあ本作では100%逃走可能なアイテムがあるので、実際はそこまで脅威ではない。 とはいえ、こういうのに出くわすまではそもそも逃げることなんてなかったので、 逃走用アイテムがあることも忘れていたりするのだけれど。

こういう微妙にプレイヤーを突き放した感じも、なんだか懐しい。

ストーリー

エンドやセツナに感情移入出来ないとか、選択肢の意味がほとんど無いとか、 そういう評判をネット上ではよく見かけた。

個人的には、そこはそんなに気にならなかった。 選択肢しだいで、クオンがちょっとエンドのこと見直してくれたり、 エンドが謎にチームリーダーとして慕われてたりとか、 素直に嬉しかったし、にこにこしながら見ることが出来た。

セーブポイントが伏線になってたりとか、そういうところも好き。 昔からたまにある設定だから目新しさはないけど。

どんどんみんなの絆が深まっていくのに、旅の目的はセツナが無事に死ぬこと、 っていう矛盾に悶々と出来たのはよかった。

ただ、エンドやキトが何者なのか?とか、 絶海群島の何のイベントも起きない人々は何なのか?とか、 もう少し知りたかった。もやもやする。 想像の余地を残されたのだろうか。うーん、困る。

Vita 版

せっかくゲームはいい出来なのに、処理落ちがホントにひどい。 一番最初に使える連携技の時点で処理落ちする。 パーティメンバーを全員表示するたびに処理落ちする。 最終的に慣れてしまったけれど…。

最悪なのは、エンディングイベント中にアプリケーションエラーで落ちたこと。 一番落ちてはならぬところだぞ…。

これは Tokyo RPG Factory を恨めばいいのか、 Unity を恨めばいいのか、 Sony を恨めばいいのか、どれなんだ。 教えてくれ。

ロード時間も長めだけれど、 PS 時代もこんなもんだったなーくらいの感覚でそこまで気にはならなかった。

総評

ゲームとしては値段分の価値が十分あるし、これからもこういう作品をどんどん出してほしいと思える内容だった。

ただ、 Vita 版はゲーム性以外の部分がかなり残念…。

もし次回作を出すならフルプライスで買うから、変なハード間差異だけは出さないでほしい…。

yewton
yewton
ソフトウェアエンジニア

父親兼エンジニア

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